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untitled (from the series "the lid on the hole") type C print 84.8 ×105.5cm  40.2 ×50.0cm 2016 ©Yosuke Bandai  Courtesy of TARO NASU


INTERVIEW | 万代洋輔 Yosuke Bandai


万代洋輔は写真を中心に、映像やオブジェなどを用いながら作品を作る美術家だ。10年近くのキャリアの中で、一貫して朽ちた物への関心を示し、『蓋の穴』シリーズから継続的に廃棄物を自身の手で再構成した上で撮影するプロセスで制作している。作品に漂う独特の造形感覚とユーモアは他に類を見ない。なぜ捨てられた物へ興味を示すのか、制作の背後にどのような思想が潜んでいるのだろう。
また、万代は先天性の双極性障害を抱えている。今では全く問題ないと語るが、2008年からおよそ5年間はその症状が悪化し、満足な日常生活を送ることができなかったという。治療のために制限を設けて心身のバランスを整えながら日々を過ごす。そういった経験は制作や作品にどのような影響を及ぼすのだろうか。
これらの興味をきっかけに、初の出版物『A Certain Collector B』のリリースに際してインタビューを行った。
万代洋輔をよりよく知るために彼の言葉を共有したい。
なお、『A Certain Collector B』は2016年9月から10月にかけて、東京の現代美術ギャラリーTARO NASUで開催された個展「"Friday, September 9 - Friday, October 7, 2016"」において展示された同名の作品を収録している。路上で拾い集めた物の組み合わせから生まれた新たな形をフラットベッドスキャナーによって撮影したシリーズで、本書はそれらを蒐集する
架空のコレクターBのアルバムというコンセプトで制作された。



万代さんのこれまでの作品について少し解説をお願いします。

初個展からあっという間に10年が経ってしまいました。これまでを振り返ると自分や写真を通して、不要とされたものを扱いながら人間について考察してきたと言えます。その考察の過程に生まれた作品は、人生や文明の儚さについて詩的に表している側面があると思います。
一方で、対象といかに交わるかという事を徹底してやってきました。以前、小林秀雄の講演のCDを聞いている時に、本居宣長が考えるということについてどう考えたかという話が出てきました。そして、考えるということは対象と交わること、付き合うことだという話が出てきました。凄く腑に落ちたのを覚えています。


写真を使うことはどう考えていますか。

写真には鏡に似た側面があります。世界について把握する為であったり、私との対話を可能にする為に扱っています。


シリーズ『蓋の穴』と新作『コレクターB』では、継続的に廃棄物を対象にオブジェを作り写真に収める手法を用いられています。朽ち果てた物、またそれに触れて弄る際に感じるのはどのようなことですか。

スキャナーはオブジェを真下から撮影するので、モニターに出てくるまで色や形がわからない部分があります。モニターに画像が出てきた時や、弄る前の落ちているものとの出会いの瞬間も随分と様々に感じます。常に状況や状態は様々で、触れたり弄る時に感じる事の種類も様々です。そんな中でも好きな残滓を弄って童心にかえっていると、どんどん対象との関係が一対一になって盲目的になったりする事もあります。そこからさらに対象に愛着とかを感じた時には、どの声を聞けば良いのかとか色々と迷走して喜怒哀楽が渾然となる瞬間もあります。ですが、こういった活き活きとした童心を対象に定着させる事が、生命感覚を揺さぶるユーモアを作品に織り交ぜているのだと思います。 


オブジェの形や廃棄物の組み合わせなどは、制作の場で直感的に選択し、決めるのですか。

即興は時に本能をフルに使えますし、宇宙と交信する意気込みも湧き出てきます。朝日を浴びながら、プラモデルをつくる時みたいにパーツとパーツを丁寧に組み合わせたりしていると、違う時間軸へ飛び出している感覚もあります。暗い部屋でとにかくスピード感を意識して並べたりしている時もそうです。でも、敢えてとても疲れてる時に作業したりもします。アイデアのメモも書くしドローイングもします。やり方は色々ありますが、イメージする暇を脳に与えない生活が必要な時期というのはあります。それでも、ビカビカした直感はそんなに簡単にはやってこない。直感の精度を上げるのに大事だと思っている事が沢山あります。ぱっと思いつくのは、ランニング、読書、早寝早起きを毎日する事です。

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untitled (from the series "the lid on the hole") type C print 84.8 ×105.5cm  40.2 ×50.0cm 2016 ©Yosuke Bandai  Courtesy of TARO NASU


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"I trust only the rib, after all, you know?" 2014, Installation view at TARO NASU ©Yosuke Bandai Courtesy of TARO NASU photo by Keizo Kioku


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"Passing Man" 2015, Installation view at CAPSULE ©Yosuke Bandai  Courtesy of TARO NASU photo by Keizo Kioku


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"Passing Man" 2015, Installation view at CAPSULE ©Yosuke Bandai  Courtesy of TARO NASU photo by Keizo Kioku


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murderer 1 "She' s not here...I don' t know" Norman Thorne, male/wood, type C print (laminated & faced mounted on acrylic),  projection/dimensions variable/2015 ©Yosuke Bandai Courtesy of TARO NASU photo by Keizo Kioku


昨年の個展「Friday, September 9 - Friday, October 7, 2016」では『コレクターB』の写真作品と、その素材となる廃棄されたゴミを浮かべた水槽と、構成されたオブジェをガラスケースに収めたものが展示されていました。また、映像作品もありました。この展覧会はどのようなプロセスで構成されましたか。

ひとつ大きな分岐点があって、そこから急激に作品が成長していきました。
制作を始めた当初から不要とされたものを扱って作品をつくっていますが、そこで生じるからだを使いながら極端に集中する行為には、2010年辺りから5年くらい制限をかけていました。でも、その5年の間に精神をコントロールするすべをかなり身につけたので一昨年、思いきってその制限を解除したんです。それは、一昨年の夏におこなった「通行人間」という個展の開催期間中とも重なります。「通行人間」の制作では「死んでいる人」について考える事に多くの時間を費やしていて、その展示期間中に祖母が亡くなり、妹が妊娠するという事もあった。そういった出来事から、なんだかワクワクしてきっちゃった部分と全身で考えたいという欲望があって、そこに制限を解除するタイミングを重ねて、近所で落ちているものを拾い集めてスキャンすることを始めました。そこが大きな分岐点でした。


体に無理のない範囲で制作を再開したということですか。

からだに無理のない範囲の制作は、体調を崩してからある程度回復するまでにやっていた事です。一昨年、制限を解除してからは月に100枚程のペースでスキャンをする作業をベースにして、そこと、他に進めている、作品になるかならないかわからないものの制作との間を行ったり来たりしていました。それを続けていくうちに、そういった時間の中で色々なアイデアが生まれて構成されていきました。はじめから明晰なかたちで展覧会の構成があった訳ではありません。自分の身体や精神に積極的に負荷をかけて、限界の中で出来上がった成果とも言える展覧会です。制限を解除した当初から、精神面へのリスクが高いとわかっていてからだを使いながら極端に集中する行為を再開したので、そのリスクを補う為に毎日最低でも4kmはランニングすることも同時に始めました。多い日はこれを3セットくらいやります。ランニングは体調を整えるのに凄く効果的です。


展示において、ステートメントで現在進行形と称されている廃棄物の浮いた水槽により、まさに現在の時間を鑑賞者に経験させる仕組みを作られていました。朽ちていく物質、過去を定着した写真、保管されたオブジェ、それぞれの関係が時間を軸にして結びついていました。過去と現在が混然となった新しい鑑賞経験でした。

水槽の作品は展覧会が終われば捨ててしまいますが、また新たな「コレクターB」シリーズと共に蘇らせることもできます。その都度写真だけが残り、被写体の入った水槽はぼぼ跡形もなく消してしまうのですが、今回の水槽の中身から1点だけオブジェを取り出して保管してあります。次の作品でそれを扱うかもしれません。


展覧会のタイトルがそのときの日付になっていることからも時間への意識を感じます。

その日付ももう過ぎてしまいました。あっという間でした。


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"Friday, September 9 - Friday, October 7, 2016" 2016, Installation view at TARO NASU  ©Yosuke Bandai Courtesy of TARO NASU  photo by Keizo Kioku


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"Friday, September 9 - Friday, October 7, 2016" 2016, Installation view at TARO NASU  ©Yosuke Bandai  Courtesy of TARO NASU  photo by Keizo Kioku


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"Friday, September 9 - Friday, October 7, 2016" 2016, Installation view at TARO NASU  ©Yosuke Bandai  Courtesy of TARO NASU  photo by Keizo Kioku


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"Communication by 100 pictures 4" video,11min25sec, loop   2016 ©Yosuke Bandai   Courtesy of TARO NASU


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"A Miraculous Object"  found materials, found objects  31x 31x126cm  2016  ©Yosuke Bandai  Courtesy of TARO NASU photo by Keizo Kioku


『コレクターB』のプリント作品は朽ちていく物を収めているにも関わらず、軽やかな質感を帯び、用途のわからない未知の物体のように見えるところに魅力を感じます。そのひとつにスキャナー特有の焦点距離と正面からの照射が関係していると思いますが、カメラとスキャナーそれぞれの特性についてどうお考えですか。

カメラもスキャナーも、プリントになった段階の特性としてはディテールの違いくらいに考えています。どちらも平面性や虚構性や等価性等のいわゆる写真の特性みたいなところは同じです。大きく違うのは撮影の段階で、カメラは人間の目に近い。スキャナーにもカメラは内蔵されていて箱の中で動きが限定されています。それも目に喩えれば、ガラス板の上に寝ているものを下から覗く様な限定された視点です。ものがガラス板の上に寝ていなければ暗闇とガラス板の汚れだけが写ります。ですから、スキャナーでオブジェを撮影して垂直な壁面にプリントを貼付けたりフレームに入れて壁にかけると、起つ残像、起たせたという出来事もやれる。ずっと地球の上に起つ事についてやってきていて、スキャナーを使った撮影も10年くらいやっているので、どちらの機材も自分の身体の一部です。


『コレクターB』の一連の作品群には様々な行為が含まれていますね。ゴミを探し歩く、集めたゴミを構成する、出来た彫刻をスキャンする、その成果物(プリント、彫刻)を見せるといった行為。どれかひとつが中心にあるのではなく、全ての行為が等価に行われていると感じられる点がおもしろいと思いました。

行為中のある状態においては、脳や精神の振れ幅を大きくする作用があります。そういった振れ幅の扱いきれない部分も含めていかに扱うかというのはやっています。行為の後に残っている痕跡の記録は、源の感覚を緩慢な時間と共に表してくれます。今は生きていて、いずれは死んでしまうけれど、全身で考えることが出来るというのは素晴らしいと思います。


作品が作者の思考や感情といったものを取り込んで出来ているというのは当然なことなのですが、万代さんの作品からは、時に葛藤などを含めた、身体を伴う経験をより生々しく感じます。今の万代さんにとって、作ることとはどのようなことなのでしょうか。

作品だけが、葛藤や経験、その他にも沢山のレイヤーを受け入れているんですよね。だから、作業するしないに大きな違いは無くて、世界にめがけて生きている事がつくることです。生活全部ですね。それで、常に15種類くらいの作品になるのかならないのかわからないものの制作を毎日少しずつ進めています。

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untitled ( from the series "A Certain Collector B") type C print 16.6 ×22.1cm 2016 ©Yosuke Bandai Courtesy of TARO NASU


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untitled ( from the series "A Certain Collector B") type C print 16.6 ×22.1cm 2016 ©Yosuke Bandai Courtesy of TARO NASU


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untitled ( from the series "A Certain Collector B") type C print 16.6 ×22.1cm 2016 ©Yosuke Bandai Courtesy of TARO NASU


今回リリースする写真集『A Certain Collector B』は、架空のコレクターBが蒐集した画像のアルバム、もしくはスクラップブックという設定です。これは展示の延長線上で捉えると、過去に類する形になると思います。この写真集をどのような本と捉えていますか。

写真集では、Bという人物がゴミの画像を集めてアルバムにしたけれど、誰かがそれを複製して商品化して消費されていく。遊び心と、シニカルな言い回しでそういう出来事をつくってみたかった部分があります。なので、本自体はプロセスです。本を手に取った人々が、実際には今後この本をどうしていくのかという変化や未知への興味が多分に反映されています。


今回は初の出版となりますが、本を作ることに対して思うことはありますか。

今回初めて出版を専門にしている方々と仕事をして、本づくりの面白さに気が付きました。本をアルバム形式にするアイデア等、交流の中から生まれたものです。これまでは本をつくることにまで興味が及ばなかったのですが、今は次の本の事も考えています。


 February, 2017
インタビュー、テキスト : 大山光平




万代洋輔 | Yosuke Bandai

1980年 東京生まれ、東京にて制作活動。 
主な個展に 2016年「Friday, September 9 - Friday, October 7, 2016」TARO NASU 、2015年「通行人間」CAPSULE 、2014年「あばら骨しか信頼してないじゃないですか俺」TARO NASU 、2012年「病める万代、無類無敵の情熱」AI KOWADA GALLEY 、グループ展に2017年「シルバニアファミリービエンナーレ2017」XYZ collective 、2016年「囚われ脱獄、囚われ脱獄」statements 、2015年「Continuous Temporality Vol.2 『Mortal』」gallery COEXIST-TOKYOなど。 
その他に「Super Open Studio NETWORK」や「Ongoing Collective」の活動にも参加している。
今年の2月には、初の出版物「A Certain Collector B」をNewfaveより刊行。そのローンチエキシビジョンをPOSTにて開催。10月には、愛知県美術館 APMoA Project, ARCHにて個展を開催予定。



A Certain Collector B 

190mm x 180mm
Offset Print
Hardcover
62 pages



Launch Exhibition | YOSUKE BANDAI

会場 : POST (http://post-books.info) 
150-0022 東京都渋谷区恵比寿南 2-10-3
会期 : 2017年2月17日 - 3月5日 12:00-20:00
オープニングレセプション : 2月17日18:00-20:00